少子高齢化が進み、家族制さえ失われつつある日本において、自らの死後、納骨について考えることは必然であり、終活の一環として取り組んでおきたい問題のひとつです。
霊園の墓地への埋葬は遺族を敬虔な気持ちにさせる一方で、管理の難しさが取り沙汰されてきました。
少子高齢化の進む昨今、家族を持たない独居老人と呼ばれる方も少なくありません。
永代供養の納骨堂を生前予約される方が増えたのはそのような理由によります。
納骨の方法は多様化し、近年の自然志向ブームが拍車となり樹木葬を望む方も増え続ける一方です。
今やもっとも人気の高い納骨の方法として東京都内の樹木葬霊園は完売状態、郊外に新しい樹木葬霊園が次々とオープンしています。
これほどまでの人気を博する樹木葬のメリットとは何なのでしょう?
デメリットと併せて考えていきます。
樹木葬の人気とメリット
自然葬には樹木葬の他に海や山への散骨があります。
いずれも生前の本人の強い意志によって行われることが多く、安価なこととお墓参りなどの管理が必要なことなどから人気を呼んでいます。
樹木葬に至っては1999年の岩手県一関市の住職が日本で最初に行ったことを契機に、さまざまな種類の樹木葬が試みられるようになり、手軽な身近さとメリットの多さから地方や都市部問わずに広く浸透しているのが現状です。
① 管理不要の永代供養
樹木葬の最大のメリットは、石組みの墓地と違い管理不要なことと安価なことです。
これまでの墓地霊園は遺族による毎年のお墓参りを中心とした花の入れ替えや掃除など、小まめな管理が不可欠でした。
そのような管理が故人を偲ぶ心情の表れでもある一方、遠方からのお墓参りは決して簡単なことではありませんし、後継者のいない家系も増えてきたのです。
納骨堂への永代供養と並んで樹木葬が高い人気を博している一番の理由です。
② リーズナブルであること
あらゆる納骨方法のうち、もっとも安価に済ませられるのが樹木葬の最大のメリットと言えるかもしれません。
一般的な相場として50万円前後、公営の樹木葬霊園などはさらに安価で数万円クラスが相場となっています。
ただし、神奈川県を含む東京都近郊においてはすでに数十倍の予約が入っているため、今後値上がりしていく可能性は否定できません。
③ 自然葬の中でもっとも季節感がある
樹木葬は自然葬の中でもっとも身近であり、遺族にとっても受け入れやすい傾向にあります。
海葬や山への散骨はあまりに遠く、故人と疎遠になってしまうことを嫌う方も少なくありません。
故人のお骨が樹木成長の糧となることは人間が自然の一部であることを立証してくれる崇高な行為であり、やがて咲く花の季節に故人を偲ぶことのできるメリットもあります。
数少ない樹木葬のデメリットについて
良いことばかりが取り沙汰される樹木葬ですが、デメリットと言われる部分もないわけではありません。
そのデメリットは副作用的な要素が強く、今後の時代の変化によってメリットと共に利用者や遺族の考え方にも変化が現れてくる可能性もあります。
① 意外と管理が大変
管理不要とは放っておいても大丈夫ということに他ならないのですが、放置しておくことが心外であるという方も多くいらっしゃいます。
そのような遺族の方々にとって樹木の周囲の草取りなどは重労働、石組みの墓地の場合は水で流すだけで済んでいた掃除がひときわ大変なものへとなってしまいます。
木の成長と共に落葉落枝も増えます。
それらを掃き清めることを風情に感じるか?重労働と思うか?はそれぞれです。
② 心情的な戸惑い
樹木葬に限らず自然葬そのものに対する抵抗感を持つ方も少なくありません。
確かにお盆やお彼岸のお墓参りの光景は季節を語る風物詩であり、遺族が集まり、故人の想い出や家の歴史を語り合う数少ない機会でもありました。
古き良き慣習が失われていくことで家族の心さえも離れていくのではないかと懸念する声も聞かれます。
家を継いでいくことは種を存続させることであり、生命あるものの宿命です。
決して一代限りで絶やすべきでないということは生物としての真理でもあります。
森羅万象の自然界の一部としての人間の自然回帰志向と、生物としての種の存続との境目で樹木葬の枝が揺れ動いているようです。
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