近年、少子化や親族間の付き合い希薄化などにより、代々引き継がれてきた先祖からのお墓を継承していくことが難しい家庭が増えてきました。
こうした社会的背景の変化の上に長期化している低成長経済による経費節約意識と、宗教に対する価値観の変化が加わって葬儀の簡略化が急速に進んでいるようです。
生前の内に墓じまいをして自然葬を希望する人の増加
少子化や親族間の付き合い希薄化など、家族状況の変化が急速に進んできました。このため、葬儀の方法ではこぢんまりと近親者だけでおこなう家族葬や直葬が増加するにつれてお墓のあり方や遺灰の処理方法も多様化してきたといえます。墓地へ行くと無縁仏化して荒れ放題になっているお墓や早めに墓じまいするケースが目立ちます。
そこで、身内の少ない一人暮らしや子供のいない夫婦などで自分の死後、周囲の人たちに迷惑をかけられないと考えて生前のうちに墓じまいを準備するケースが増えています。
その特徴としては先祖の墓地へ埋葬されるより自然葬を希望する人の増えていることが挙げられます。そのうちの一つが20年ほど前から始まった樹木葬です。
四季折々に季節の移り変わりを味わう死後の世界
ただし、樹木葬では従来のように遺灰を骨壺に入れずに目印用の樹木の脇に埋葬するだけなので、一旦、遺灰を埋葬すると元へ戻せないデメリットがあります。従って、墓石も作らず、目印は樹木や草花だけになり、遺灰は年数が経過することにより土に戻るだけになります。
このため、墓地の管理費用も殆どかかりません。死後は自然の中へ戻ることを目的と考える死生観の強い人たちが好きな樹木や草花の脇で眠り続ける埋葬方式ということです。一定の区画を特定し、シンボルとして植える樹木の周りに遺灰を赤の他人と一緒に埋葬する合祀、あるいは自分一人や夫婦だけで埋葬してもらうケースなどがあります。
自由度の高い樹木葬ですが、あくまでも法律で墓地の指定を受けた墓所しか遺灰を埋葬できません。大都市圏では墓地公園が多くなっていますが、人気の高まりを受けて敷地の一角に樹木葬の用地が合同区画、あるいは個人区画として確保されるケースが増えています。
一方で、山奥深くの山林に囲まれた場所に静かに眠りたい人の樹木葬もありますが、お墓参りに行くには不便な場所が多いことを納得しておくことが必要です。樹木として日本の象徴でもある桜の木の選ばれるケースが多いですが、余り高木にならない樹木や草花も選ばれているようです。
要するに、死後の世界でも四季折々に季節の移り変わりを味わっていたいという希望が強く表れているわけでしょう。
管理母体の規約や供養の方法などを確認して墓所の選択
このため、春の芽吹きから開花してきれいな花が咲き乱れ、秋には紅葉を楽しませてくれる落葉樹が好まれるようです。
また、バラや草花などの周囲に埋葬してくれる墓地公園もあるので、自分の好きな樹木葬を選ぶことができます。墓地公園の樹木葬の人気が高まっていると抽選になるので生前のうちに早めに手配しておくことが必要のようです。
自分や夫婦単位で埋葬できる樹木葬では自分の好きな樹木を指定することも可能ですが、合祀するケースより費用が高くなるようです。運営管理母体には公営、民営、寺院管轄などがありますが、樹木葬はその人一代限りが原則になっています。
なお、使われる樹木や草花などが自然災害や年数経過とともに枯れたり折れたりすることもあるので、場所を選定したら運営管理母体の規約や供養の方法などを確認することが必要です。最終的には運営管理母体との間で墓所の購入手続きを済ませて使用許可契約を締結することになります
昨今の社会で家族や親族の少人数化が進んでいますが、一人暮らしや子供のいない夫婦が死後、周囲に迷惑をかけないことを目的として墓じまいをする人が増えています。その方法として自然葬が挙げられていますが、その一つに樹木葬があり、人気の出ている埋葬方法です。
生前の内に好きな樹木や草花の脇で眠り続けたいとする死生観の人が増えている表われでしょう。墓所により運営管理方法に違いがあるので場所の選定前に運営管理団体の規約や供養方法を確認することが大切です。