人気の高まりと共に樹木葬を取り扱う霊園が増えたのは大変喜ばしいことなのですが、樹木葬の位置づけをよく理解しないまま集客だけに力を注いで誤解を招いたケースも多々あります。
逆にそのようなトラブルを経て、樹木葬という特別な納骨方法が認知され、形づくられてきたとも言えます。
1948年に墓地埋葬法が制定された当初、今日のような自然葬ブームの到来を予測できた方がどれだけいたことでしょう。
まったく触れられていない散骨に対するトラブルが多発していることは今後の自然葬への取り組みを進めていく上でも忘れてはなりません。
散骨とは一線を画した観のある樹木葬に、比較的トラブルが少ないのは位置づけが明確になっているからとも言えます。
樹木葬に必要な許可とは?
樹木葬を行うには、まず樹木葬を取り扱っている霊園ないし宗教法人や自治体へ問い合わせてみることが必要です。
安価で日本人の死生観をくすぐる樹木葬は人気が高いため、多くの樹木葬霊園が完売状態であり、さらなる造営を図っている最中です。
樹木葬を取り扱う霊園や宗教法人は、あらかじめ埋葬許可を得ていた既存の墓地に隣接した場所や、所有する山林に新たに埋葬許可を得て樹木葬を行います。
自治体においても同様、既存の霊園や公園の一画、あるいは、古い施設の再開発と併せた樹木葬霊園の造成が進んでいます。
いずれも墓地としての埋葬許可を得た土地に限ります。
つまり、樹木葬を行うのは何処でも良いわけではないということです。
公園にしろ、山林にしろ、霊園として埋葬許可の下りた土地でなければ樹木葬を行ってはいけません。
勝手な埋葬や散骨は法律違反
埋葬許可の下りていない土地に埋葬すると墓地埋葬法に違反するとともに死体遺棄法にも違反することになります。
墓地埋葬法第4条違反として罰金、死体遺棄法違反として懲役3年が課せられます。
もしかしたら、故人の遺志を最優先させようと思ってやったことが法律違反となってしまっては故人も浮かばれないことでしょう。
故人の想いと若干のずれが生じてしまうこともありますし、自然葬というコンセプトからずれてしまう部分も出てくるかもしれませんが、決まり事があるなら、その枠組みの中で対処するに越したことはありません。
どちらの法にも触れなければOK?
墓地埋葬法に違反しないよう埋葬許可を得ていない樹林地帯に、散骨という方法での樹木葬を試みたケースもあります。
2005年北海道長沼町でのこの葬送法はあらゆる方向からクレームの声が上がり、ほどなく消滅しました。
まず樹木葬という言葉が集客に用いられている感が強いこと、そして、周辺住民から農作物への風評被害を怖れた苦情が殺到したことなどが挙げられます。
この件で注視されたのは散骨という行為に対して何ら法的規制がなかったことでした。
この事例によって死体遺棄法が頻繁に取り上げられるようになり、墓地埋葬法の見直しも検討されるようになったのです。
長沼町の例を観るまでもなく、法律というものが後手に回るケースは多々あります。
法律を護ることは大切ですが、法に触れなければ良いというわけではありません。
故人の願いも大切であり、今を生きている遺族や周辺住民の生活も大切なのです。
埋葬許可を取得するには
土地の埋葬許可は各都道府県の首長によって認可されます。
基本的に個人に対しては山林僻地を除いて許可しないとされています。
個人の敷地内で樹木葬をする場合には、その土地をまず墓地申請しなければなりません。
認可される可能性は限りなく低いのですが、仮に認可されたら管理者を置いて地元自治体に届け出をしなければなりません。
そして、帳簿や書類を揃え、墓地として運営していかなければならないのです。
近隣住民の同意を得ることはもちろんのこと、埋葬の要請があればこれに快く応じなければなりません。
つまり、霊園として機能させなければならないのです。
決して思いつきや軽々しい決断ではできないことです。